全てをくれたあなたに


「これはこれは、どうされましたか、若。」




柔らかい物腰の男性。





「真白に果物を持ってきて欲しいんだが。」





「果物を、ですか。
承知しました、すぐに用意してお持ちいたします。」





「ああ。」





短く返事をすると、龍二はさっさと歩き始めてしまった。





・・・お礼を言おうと思ったのに。





口を開く時間も与えてくれない龍二に少し拗ねる。






すると、そんな私に気づいたのか立ち止まって私の顔をのぞき込む龍二。





「どうした真白。何か不満でもあったか?」






『・・・お礼言えなかった。』






小さくそう言ってぷいっとそっぽを向く。





そう言えば、と龍二が声を上げる。




「いつもの事で気にしたことも無いな。
あれは上下関係だからいちいちお礼を言うことは必要ない。」




『だってそれは龍二の場合でしょ?
私は組員を従えている訳では無いし、まだきちんと挨拶をしていないもの。』