殴られて切れた口の端から垂れる血を拭う事もせず、私はよろよろと立ち上がり窓のそばまで行った。 そこには悔しそうに顔を歪める彼の姿があった。 ――か え っ て――― 私は口パクでそう伝えた。 私の言ったことを読み取った彼は、既にある眉間のシワをさらに深くして、 ―――た す け る――― そう言い残して去っていった。 私は突然現れて助けるとまで言った男を不思議に思いながら、今日も眠れないまま夜を過ごした。