全てをくれたあなたに


ベルの音に反応して、店の奥から小柄な女性が出てきた。




「夏希ちゃん、久りぶりっ!」





その女性は夏希の姿を見ると勢いよく抱きついた。





「久しぶりね、桃。
今日は私じゃなくて・・・この子!
お願いできるかしら?」




桃を離し、夏希に隠れるように立っていた私を前に引きずり出す。





強制的に桃と向き合う形になり、どうしたらいいのか分からずに見つめ合う。




桃は私と同じくらいの身長で、ミルクティーブラウンのボブの髪が彼女の顔を明るく見せていた。






「ほら2人とも、見つめ合ってないで自己紹介しなさい?」





夏希の声にはっとする私達。






『えと、真白と言います。今日はよろしくお願いします。』




「初めまして、水沢(みずさわ)桃です。
髪の毛すごく長くて不便でしょ?
私が飛びっきり可愛くしてあげるからね!」





よろしく!と桃から差し出された手に遠慮がちに手を乗せると、ぎゅっと握られてブンブンと振られた。





「こら桃、そんなに振ったら真白ちゃんの手が取れちゃうわよ?」





私達がいい感じに馴れ合えたところを見て、夏希が笑いながら言う。