全てをくれたあなたに


元気の良い見送りで私達は車に乗った。



車は静かに動き出し、門を出た。




ここ、榊組に来て以来、初めての外出。




私はフルスモークの窓から見える見慣れない景色を眺めていた。





「真白ちゃん、怖い?」




そんな私を見て心配そうに言う夏希。





『ううん、怖くないよ。ただ、日の当たる世界はこんなにも綺麗で、暖かくて、楽しいんだなって思って。』





「そう、ね。あるのが当たり前だけど、感謝しなくちゃいけないものね。」





そう言って笑う夏希。





「今日行くところはね、私の幼馴染みがやっているところなの。
明るくて優しい人だから真白ちゃんもきっと好きになるわ。」





自慢げに話す夏希を見て、私は学校に行ったらこんなふうに人に話せるような友達を持とう、と強く思った。






夏希とたわいもない話をしていると、薄茶色で一見カフェにも見える外観の理髪店に着いた。





「姐さん、真白様、着きました。」





運転手がそう言うと、車のドアが開けられ、お礼を言って店のドアを開けた。







――カランカラン・・・





可愛らしいベルの音とともに、ジャズのBGMが聞こえてきた。