「わざわざカッターを入り口側に投げたもんね。飛び降りれば死ねる高さなのに、いつでもやめれて時間のかかる窒息狙いだもんね」

違う。

死のうとしたよ。

声が出ない。
怯えたように息だけが
漏れていく。

「死ぬふりなんて何回目?」
「嘘と、妥協と、欺瞞と、キレイゴト。そればっかりだもんね。境本の内側には」
「境本は、本当に弱っちいね」


「………ゃめてよっ」

「俺はね、境本のその弱いところ、ちゃんと理解してるつもりだよ。全部ひっくるめて境本を好きだから。」

「…だって、」

好きだと認めてしまったら、

「私が生きててもいいことになっちゃう…」