………死なないで、境本





「   げほっ、 っは…はっ…はっ…、げほっ、けほっ、はっはぁ」




変な汗が沢山流れてきて、
私は覚醒を果たす。
真っ暗な視界がゆっくりと
色彩を取り戻して屋上の景色が蘇る。
それに伴って
私の思考も酸素を取り戻した。

「…はっ…はっ…、ン…はぁ…はぁ」
「はぁっ はぁっ はぁ」

吐き気と頭痛、
動悸の激しさと息切れを
世界を把握する。
力の入らない体を松本が抱えるように
支えてくれていた。
松本の私を抱える腕にぐっと力が入る。
彼の体温が私を
抱き締めて包み込んだ。
走って階段を昇ってきたのか
その息は荒い。

松本によってちぎられたであろう
ビニールテープが地面に転がり、
その横には投げ捨てたはずの
カッターがある。

眉を八の字に寄せて
口を真一文字に引き結んだ松本は
泣きそうに見えた。