大丈夫、全部、鞄の中にある。

30分くらいたってから、
ビルをでて松本と別れる。

「じゃあ、また明日ね」

「バイバイ、松本」

松本はそのまま自転車で家路について、
ビルから近い駅に行くよと
松本に言った私は
再び、ビルの階段を登る。

屋上に転がり、
ただ黒いだけの空を見上げた。
綺麗に見えないのは私たちのせい。
本当はどうでもいい理論を
振りかざして
もう終わりにしよう。

放り投げていた鞄の中から
新品のビニールテープと
茶封筒を取り出した。
封筒には何日か前に書いた
『遺書』の文字。
風で飛ばないように鞄で押さえて置いた。

息を吸って吐いて、止める。
気負わなくていい。
ただ静かに終わるだけ。

ビニールテープを
少し引っ張りながら首にまいていく。
こんだけリストカットしておきながら
死ぬときは首絞めんのかよって
自分に呆れながら。

何重にか巻いてから
カッターで切って残りを
カッターと一緒に下へ投げ捨てた。
もう助からないように。

ビニールテープは力が強いから
少しずつ戻っていく。
息苦しいだけだったのが
頭の芯がぼーっとする熱も加わる。

「けほっ…」

血が滞る感じ。
頭が痛くて重い。
遺書の近くで死のうとして、
鞄のそばに戻ろうとした足が絡まる。
その場に倒れた。
息ができないのが苦しい。
視界が狭くなってくる。
苦しい。
暗くて。
怖い。
耳鳴り。
苦しい。
指先冷えてる。
息。
酸素ほしい。
苦しい。




思考がなりやんで、
もう全部なくなった。