キラキラと濡れた瞳が
飲み込むように俺を映す。
泣きつかれた充血した目と
深く沈んだ隈が痛々しい。

「休みすぎだよ、境本。君が学校にいないと、今日は廊下ですれ違えるかななんていうわくわくがなくなっちゃうんだよ。」

「私は、君に会うとわかんなくなっちゃう。嫌いなのに、人間なんて。なのにどうして君を…、」

「…境本?」

境本は口をつぐんで
下をむく。
表情は見えなくなって
震えてる肩だけが彼女の感情を
可視化しようとする。

「境本?」

「なのに、どうして君を…」

境本が顔をあげて、
壊れかけの表情と赤い頬が
何を抱えているか。

境本の言葉。
白い肌の紅潮。
睫毛に絡まる涙。
君の葛藤と恋情が。
俺に、届くとしたら、
何かが変わってしまう?


だめだ。
君は俺を受け入れるべきじゃない。


「……月がきれいですね」

「…ぁ、…もう……死んでもいいわ。」

君の世界が変わってしまうから。