「…それは平気じゃないよ」

松本が返却手続きを
終えた本を持って書架の方へ
行ってしまう。
残された私は一人
カウンターに座った。

時間が過ぎていく。
来館者はいつも通り少ない。
閲覧席で勉強道具を
広げる人と、
漫画を読む人で
両手があれば足りてしまう。

私たちの会話を
聞いていた人はいなくて、
当たり前にそれぞれの
時間をすごしている。

10分くらいして
松本が戻ってきた。
隣に座ってカウンター業務。
そんなに借りにくる人も
いないため何もすることのない時間。
持ってきていた小説を
めくりながら松本の方を窺う。


松本。
松本ならこの衝動を
どうにかしてくれると
思っていた。

松本なら死にたい今日を
生きててもいい今日に変えてくれると
勝手に期待していた。

また私の悪い所が出てる。

どろどろと滲んで侵して、
水が広がっていくみたいに。
内側が崩れていく。