「怒ってない。違うの。違う。別に君に対してどうこうではないの。ただ、」

情緒が不安定で
考え始めると堰を切ったように
溢れ出してしまう。
松本には関係のない話。

「猫が死んでたの「車にはねられたんだよ。「まだ小さな猫だった「大人になったばっかりの若い猫で、「黒の艶やかだった毛並みと凛々しくて細い体が「ひしゃげて「崩れそうになってて「血はほとんどでてなかったの「頭を打ったのね「車にはねられたの「あの美しい猫は、私たちが殺してしまったの「私たち人間が世界を狭くしてしまったから、あの猫は死んでしまったの。「私のそれよりずっと綺麗で価値のある命を私たちが殺したの」
過呼吸になりそうになって
一度深呼吸する。
まだ大丈夫だから。

「境本、平気?」

「平気、自分で、処理できるから、かまわなくていいの」