「いなかったら二個を一人で食べてたの?」

「そうかも。でもいないときのことは考えてなかった。松本は馬鹿だから、ここにいるって確信してたよ」

その鼻の赤くなった
笑顔ですべてが満ち足りた
気がした。

馬鹿はひどいななんて
思いながら、同時に
好きだなと思う。
壊れてるくせして必死に
動くカラクリみたいな
不器用な女の子らしさ。

最後の一口を飲み込む。
境本はまだ半分くらいを
残して、猫舌なのか
ゆっくりさましながら食べていた。

「ねぇ境本、キスしようよ」

「…バカなの?」

「バカじゃないよ。意外と成績優秀な方」

「文系くそなの知ってるけどね」

「理系は就職に有利なんだよ」

「へー」

興味なさそうにあんまんをちぎる。

「だからキ「しない」

「そこで全く照れたりしないのが、境本だよね。かわいい」

「うざい」

「でも今日はバレンタインだよ。聖なる夜に恋し合う男女が二人って、やることは一つでしょ」

「松本ってインテリな雰囲気あるくせして、スケベ全開だよね。あと恋し合ってはないよ。松本の一方通行」

「それはさみしいなー。」