満たされないカラダ

痛み

「ん…」
私はそう呟きながらベッドの中で目を覚ます。寝ぼけまなこで見つめた先には大きな背中。
ああ…。私はまたやっちゃったんだな。まだまだ眠気が抜けきらない頭で考える。

昨日の夜、私は泣きながらあなたに電話した。夜中だったにもかかわらずあなたは優しく私を迎え入れてくれた。
ドアを開けてくれてあなたの顔を見た瞬間に涙が止まらなかった。理由はよく分かんないけど…。

私の名前は櫻宮茉莉奈。先月めでたく結婚した。相手は櫻宮大翔。同じ会社に勤めている。結婚した時はとても優しかったのに最近優しくしてくれない。夜も前は一緒に寝ていたのに最近は別々の部屋で寝ている。朝も一緒にご飯を食べていたのにここ最近は起きる時間が違うからなのかもしれないが一緒に食べなくなった。会社で会っても話さなくなった。私は毎日不安で夜も寝れなくなっていた。

私が身動きをしたからだろうか。あなたが目を覚まして私の方をいつの間にか見つめていた。


「ん…。起きたの?」あなたは大きな男の人の手で私の頭を優しくなでる。それが心地よくて思わず甘えてしまいそうになる。

私は頷くとベッドの下に脱ぎ捨ててあった服を着る。そろそろ帰らないとまずい時間になっている。さすがに起きた時、私がいないのはね…。少し後ろめたい気持ちを抱えつつ帰る支度をする。私が立ち上がって洗面所に行こうとした時、あなたが私の服の裾を掴んだ。私がびっくりしてあなたを見つめると「もう少し…いて?」と眠そうな甘い声で言う。私が俯くとあなたが寂しそうな顔をする。「ごめん…。家で旦那さん待ってるよね…。」そう呟いた。

一緒に一夜を過ごしたのは幼馴染の櫻井大雅。笑顔がかわいくてスポーツもできる人気者だ。私は気が弱かったからいつも大雅に頼っていた。もちろん今の旦那さんの大翔にだって頼った。いつも気づけば二人がそばにいた。