『忍姫恋絵巻』



『才氷、君が諦めなければ、きっと行きたい場所へ行ける』



在政様はあたしの手を引く。


「あたしの行きたい場所……本当に、行けるのでしょうか!!」


すがるように、あたしは在政様の腕を掴んだ。


『もちろんだよ、だって才氷は、私を自由にしてくれただろう?』


「え……?」


『覚えていないかい?才氷は、私に自由な世界を見せてくれた。その、懐刀を通してね』


「!!」


あの時、在政様を守れなかった日の事を思い出す。



『才氷と一緒に……外の世界へ連れ出して…』

『外の世界…?』


『才氷と一緒に……自由に……なりたい』


そう言った在政様は、なぜか悲しげなのに、嬉しそうだったのを思い出す。


その表情の理由を、あたしは理解出来ないままだったのだけど……。



『私はね、あの時初めて、全てのしがらみから解放されて、自由になれる事にホッとしていたんだ』


「在政様……」


身近な人を疑い、信頼出来る人も分からない城で、在政様はずっと孤独だったのだと思う。


自分のために生きることさえ出来ない身分だった。