『忍姫恋絵巻』




「旨い……旨いぞ!!」


信秋は、薙刀についたあたしの血を舐める。


こんな狂った奴を、この世界に置いて死ねない。
こいつは、家光が作る泰平の世には邪魔な存在だ。


「はぁぁっ!!」


あたしは地面を強く蹴り、信秋の首を狙いにいく。


「ふははは!!」


キンッ、ズシュッ!!


お互いに傷だらけで、血はすでに地面に水溜まりを作るほどだった。



後には御子柴も控えてる……。
まとめて、早く倒さなきゃ、あたしも…。


倒す前に死んだら、何も成し遂げられない!!


あたしは決意を決め、懐刀を天へと向ける。


「凍てつく、精錬の造形……」


ゴゴゴッ…。


天が曇り、まるで夜かのように、一面暗くなる。
そして、冷気が肌を撫でた。


「まとめて……終わらせる……」


ポタリ……。


血が流れる事さえももう気にならない。
ここで果てても、こいつらを終わらせられれば…。


「させるか!!」


御子柴は信秋の指示を無視して、こちらへ駆け寄ってくる。


「雲が、大気が震えておる!!やはり、お前は俺と同じ、化け物よのう!!」


貧血に霞む視界の中、狂喜する信秋が見えた。



「在政様、力をお貸しください……」


この懐刀に宿っているのなら、共にこの地を取り返しましょう。そして、誰もが笑って過ごせる泰平の世を!!


「氷桜乱舞(ひおうらんぶ)!!」


ビュオオオオオッ!!!


「ぐぁぁぁああっ!!」

「うっ……あ……」


氷のような桜が吹き荒れる。

キラキラと舞う氷の桜は美しく、そして鋭く信秋と御子柴の体を切り裂いた。


そして、風が止むと、静寂が訪れた。後は、ハラハラと氷の桜が落ちてくるだけ。



「くっ……」


あたしは膝から崩れ落ちる。
そして、バタンッと地面に倒れた。