『忍姫恋絵巻』



「俺は……ただの仕事のつもりで、才氷を拐ったけど…」


赤はあたしを真っ直ぐに見つめる。



「いつのまにか、才氷から目が離せなくなってたな…」


困ったように笑う赤の髪に触れる。


燃えるような赤色。
あたしの、凍えきった心さえ溶かしてしまう熱。


「赤、あたしを拐ってくれて…ありがとう」

「なぁ、才氷。なんで今、こんな事……」



なんで今…か。
今じゃなきゃ、もう伝えられないような気がしたから。


赤を押し倒し、赤の体が手すりの向こうへとゆっくりと落ちていく。


「おい、才氷っ!!」


落ちる赤に笑みを向ける。


「ありがとう……好きだよ、赤」

「才氷っ!!」


好きだ。
本当に、心の底から……。


あたしに、生きる希望を与えてくれた人。



「出来ることなら……」


あたしは、後ろを振り返り、信秋と御子柴を真っ直ぐ見据えた。



「面白い茶番を見せられたわ。のう、御子柴」

「はい、信秋様。あの男を逃がしたか…服部 才氷」


信秋と御子柴が武器を構えてこちらを見つめ返す。



出来ることなら、あなたと、そして…あの温かい仲間と一緒に、生きていきたかった。