『忍姫恋絵巻』



「連れは、瀕死のようだが?また、あの時みたいに、ソレを殺したら、お前はイイ顔見せてくれるんだろうなあ」


信秋は不気味な笑みを浮かべながら、こちらに歩み寄ってくる。


「才氷……早く逃げろ……っ」


赤はあたしの肩を掴み、後ろに遠ざけようとする。


こんな時まで、あたしを守ろうとして…。
もう、それで十分だ。



「ありがとう、赤」


あたしは、赤を縁側へと押しやり、赤の背中が手すりに当たる。ここは高いせいか、風が強い。その向こうは、城の外だ。


まぁ、普通の人間がここから落ちたら死ぬけど…。



「才氷……?」


不安そうにあたしを見る赤に、あたしは笑みを浮かべた。



「あたしは、守られるなんて考えた事も無かった」


赤を手すりに押し付けながら、あたしは話続ける。


「ずっと……ずっと1人で戦い続けるんだって思ってた」


でもそれを、辛いとか、苦しいなんて思いもしなかった。


それが、在政様を守れなかったあたしの償いのように思えて、そう自分を追い込む事で、失った悲しみを忘れようとした。



「徳川で過ごすようになって、今までのあたしは、本当は悲しくて苦しかったんだって気づいたの」


それにすら気づかずに生きていたかもしれない。


そうして、あたしは自分も大切にせず、在政様に救われた命を、適当に扱っていたかもしれないんだ。