「才氷、列の先頭が織田の領地に入ったぞ」
そう言って寄ってきたのは赤だ。
「いよいよだね」
「なぁ、才氷」
気を引き締め直していると、赤は心配そうにあたしを見つめた。
「信秋は、何よりもお前を欲してる。本当なら、その目に晒すのさえ嫌だけどさ…」
「赤、それでもあたしは…」
「最後まで聞けって。…でも、お前はたぶん力で押さえつけても行くって聞かねーだろ?だから、傍で守るって俺も心に決めたから」
強気に笑う赤に、あたしは一瞬目を見開き、固まる。
そしてすぐに、顔が熱くなるのを感じた。
「ば、馬鹿……。そんな、直球すぎ」
何言ってんの、本当にもう!!
守るとか、そんな真っ直ぐに言われたら、照れる。
「1人じゃないって、言いたかったんだよ。分かれ馬鹿」
馬鹿のおかえしをくらったあたしだけど、言い返す事も出来ずに恥ずかしくて俯いた。
でも、赤が傍にいてくれるから、あたしは安心していられるんだと思う。
もし1人だったらなんて、今はもう考えられない。
あたしは、もう失わない為に、皆と新しい世界を切り開くんだ。