『忍姫恋絵巻』


「…本当は…家光をたくさん叱ろうと思っていたんですが……」


そう言って、あたしは家光を優しく抱き締める。




「今日は恐い思いをしたでしょうから、家光を甘やかす事に
しました」


あたしは家光の頭を撫でて、抱き上げた。



「わぁっ!!」


家光は慌ててあたしの首に掴まる。



「才氷は女の子なのに、力持ちなのね!!才氷は私のおうじ様みたい!」


家光は笑顔であたしを見上げる。



「…おうじ…さま…とは…?何の事ですか?」


聞き慣れない言葉に首を傾げる。



「外の国の言葉で、姫をいつも傍で守り、必ず助けに現れる
人の事だって赤が言ってたわ!」


家光は人差し指を立てて笑った。


へぇ……。おうじさま、ね。


「…そうですか……。おうじさま、悪くないですね」


家光と目が合うと、お互いに微笑みあった。


「さぁ行きましょう。家光は、部屋で公務をなさって下さいね」


あたし言葉に、家光は顔を真っ青にした。



「そんなぁぁ〜っ!!!」


家光の叫ぶ声が、城中に響き渡るのだった。