『忍姫恋絵巻』



「家光、あたしからも感謝させて下さい」

「さ、才氷!?」


家光は膝をついて頭を下げるあたしに、目を見開く。



「桜牙門の民が、またこうして戦う事が出来るのは、家光のお陰です」

「才氷…もちろんよ、だって、誰しも故郷を奪われるのは、身を裂かれるような痛みを伴うものだわ」


まるで、家光が傷つけられたかのように、胸を押さえて瞳を閉じた。


「そうして、痛みを己のモノのように感じられる優しいあなたに、あたしは何度も救われました」


そして、あたしは胸に手を当てる。


「あたしには、心に、忘れられない主がおります」

「うん。桜牙門の当主、桜牙門 在政様だね」


家光はあたしを真っ直ぐに見つめて、そう言った。



「はい。でも、心から仕えたい主に出会ってしまいました」


それは……家光、あなたの事だよ。
あたしを照らす光のような家光を守りたい。


それは、あたしの為でもあるから…。