「ほう、よほど仕置きが必要らしいな」
黒い笑みで赤に迫る春日局に、あたしも笑ってしまう。
「才氷」
すると、馬上の家光があたしに声をかけた。
「家光……」
あの時、あたしは家光に何も言わずに徳川を去ってしまった。家光は、あたしを許してくれるだろうか…。
「才氷、あなたに怪我が無くてよかった」
「どうして、そんな優しい言葉をかけてくれるのですか?」
変わらない家光の優しい笑顔に、あたしは泣きそうになった。
本当なら、家光を失望させていたかもしれない。
仕える者として、勝手な行動をしてしまった。
「あたりまえじゃない!あなたは私の大切な人よ。どんな過去を抱え、どんな選択をしたとしても、それは揺るがない」
馬から降り、家光はあたしの前に立つ。
それに合わせて、あたしは地面に膝をついた。
そして、深々と頭を下げる。
「でも、私から離れるなんてひどいわ、才氷」
「え……?」
家光はそう言って、あたしを抱き締める。
着物の裾が汚れるのも気にせずに。


