『忍姫恋絵巻』




「たとえ幻影でも……」


そう呟きながら在政様の前にしゃがみこむ。


「あなたに会えて嬉しかった…」


ポタリと、在政様の幻影の頬に涙がこぼれ落ちた。


もう一度、この桜のように美しい桃色の髪と瞳、その声を聞けて嬉しかった。


「また、見送る事になるとは思ってなかったけど…」


もう、あの時みたいに泣き叫んだりしない。
安心して、在政様…。


「あなたはもう、あたしと同じ命を生きてる。こらからも、ずっと一緒です」


懐刀を取りだしそれを見せた。


幻影でも、あたしにこうして過去と向き合う機会を作ってくれたことに、感謝する。



「また、共に桜を見ましょう。約束……」


あたしは、在政様の小指に自分の指を絡める。
そして、ゆっくりと冷気を送った。


「凍てつく、精錬の造形……」


在政様に出会えて良かった。
あたしに、心から誰かを慕う心を教えてくれた人。


あなたの事は一生忘れない。
でも、憎しみに囚われて生きる事もしない。


「氷結(ひょうけつ)」


パリパリ……パリンッ!!


在政様の体は、あたしの氷で凍りつき、粉々に砕けた。


キラキラキラ……


氷の破片が、まるで冬の桜のように空へと舞い上がる。
それをボーッと見つめていると、隣に赤が立った。