『忍姫恋絵巻』



「あの日から、我らはまた桜牙門の地を踏む事しか考えておりません。どうぞ、才氷様、我らをお連れ下さい!」


小次郎殿と共に皆が頭を下げた。


「一緒に帰ろう、あの場所に」

「「「オオーッ!!」」」


あたしの一言に、地鳴りがするほどの声が響き渡った。



「才氷、桜牙門の再興を目指すんなら、今はまだここに残ってもらったほうがいい」

「赤……」


赤はあたしに小声で耳打ちした。


「そうだね、今は確かに追われてる身だから、時が来るまではここにいたほうが返って安全ってことね」



それに、この団体での移動は目立つ。
まずは、家光に相談してからだ。


「小次郎殿、今は訳あってあたし達は信秋に追われてるの。だから、時を見て召集の合図をする。それまで、今まで通りに」


「かしこまりました。では、ここに信秋の兵が来た時は、何も知らない村人に扮して追い返します」


小次郎殿は強気に笑って見せた。


「本当に、皆……生きててくれてありがとう」


在政様の願いを、1つでも叶えてあげられたらと願ってた。せめて、最後に残した願いだけはとここまで頑張ってきたんだ。



でも、今は純粋にあたし自身が、皆が生きていてくれた事が嬉しい。


あたしにとっては、第2の故郷だから…。


「今や、我らの希望はあなたです、才氷様」

「そうですぞ!こうして、また私たちに光を下さった」

「きっと、桜牙門を再興させましょう!」


皆の声に、涙が流れそうになって、空を仰ぐ。
晴れ渡る青空に、今までの悲しみも、晴れていくようだった。