丸い月が、夜空を照らす。
少し冷たい秋の風に、羽織りを胸元で手繰り寄せた。
今日は満月だったんだ…。
月の満ち欠けにも気づかないくらい、1日1日が必死だった。
「赤……」
あんな風にいなくなって、怒ってるよね。
「行くな」って、あたしの為に必死になってくれてた。
もう……。
きっと、赤には会えない。
あたしは、胸元から、椿のかんざしを取り出す。
『才氷には、真っ赤な椿のが似合うし!』
目を閉じれば、怒りながら、椿のかんざしをあたしの髪に差す赤の事を思い出す。
『俺の赤とおそろいな』
そう言って自分の髪を指差す赤。
本当に、あたしを好きになってくれたんだって分かった。
「あたしにとって、赤色も椿の花も、もう特別だよ…」
赤の事を思い出すから…あたしが、赤を好きだから。
かんざしをぎゅっと胸に抱き締めて、月を見上げた。
この満月を、赤も見上げているような気がしたから。


