『忍姫恋絵巻』




「在政様っ……どうか、気を確かに!!」

「才氷、君しか…私には、君しかいないんだよ…」


すると、在政様は右手に握っていた、桜牙門の桜の印の刻まれた懐刀をあたしに差し出す。


「在政様……?」


どうして、これをあたしに??


「これを…才氷に持っていて…ほしい」

「大事な懐刀を、どうしてあたしなんかに?」


あたしは、在政様の手ごと、懐刀を握りしめた。



「私と才氷は……心で、魂で繋がり合ってる…」

「心で……」


前に、在政様はあたしを心の一部だと言ってた。


あたしにとっても在政様は心の一部で、失ったらあたしは壊れてしまう。


「この身を失っても、私はこの懐刀に宿り、才氷と一緒にいよう…」


「在政様っ……」



刀なんかじゃなくて、こうやって触れ合える人のまま、傍にいて欲しい。



「才氷と一緒に……外の世界へ連れ出して…」

「外の世界…?」


「才氷と一緒に……自由に……なりたい」


そう言った在政様は、なぜか悲しげなのに、嬉しそうだった。その表情の理由を、あたしは理解出来ない。



死ぬっていうのに、どうして嬉しそうなのか。


「………笑っ…て…」



血まみれになった在政様は、あたしの頬に触れて、安心させるように笑う。


いなくなってしまう……。


「…っ…ひっく…っぁ」


あたしは、泣き続けた。頬に触れてくれた手に、温かさはもう無い。


「…あぁっ…どうして…こんな事に…。どうして…」


弱くて、「守る」なんて言って、あたしは結局何も守れてない!!