『忍姫恋絵巻』



「いや、私が行こう」


そう言って、あろう事か、在政が名乗り出た。


は??
いや、今のは空耳?空耳ですか!?


「在政殿が?」


それにはさすがの信秋も目を点にした。


そりゃそうだよ!!
ここで当主が出る馬鹿がどこにいるの!?


こ、ここにいたー!!


「ぶわっはははは!!面白い、面白いぞ!!桜牙門の当主、ことごとく俺を楽しませてくれるわ!」


信秋は笑い出す。


「俺に楯突く人間が現れる事がこんなに心踊るとは!!」


信秋は刀を抜き放ち、一人の家臣に刀先を向ける。


「御子柴(みこしば)、お前が行け」

「ハッ」


背の高い大男が太刀を手に在政の前に立ちふさがる。


カチャッ


そして、太刀を抜き放った。
そんな御子柴に、在政は丁寧にお辞儀した。



「お手柔らかに頼むよ」


その場にそぐわない微笑みを、御子柴に向ける。
御子柴は無表情だった。


「まてまて!正気!?」


恐怖におかしくなった!?
ってか、在政、刀なんて使えるの!?


あたしは慌てて在政に耳打ちをする。


「はは、正気だよ」


カチャッ

在政は軽く笑って、懐から、桜の印の入った懐刀を取り出し、抜いた。それは、白い柄に刀身の美しい刀だった。