桜牙門の城へ通うようになって数ヵ月。
桜の季節が終わり、夏が来た。
ミーン、ミンミンミン…
蝉の鳴き声がうるさい。
だんだん、頭の中で鳴いてるんじゃないかと思うほどに。
「あ、暑い……」
なんたってこんな熱い日に外に出なきゃなんないの?
それもこれも……。
「助かったよ、才氷。織田の領地までの護衛、よろしくね」
「はぁ…」
あたしはため息をつく。
そう、今日は織田家当主、織田 信秋の招待で、織田城へと向かう道中の護衛をしている。
もちろん、忍びだとバレないように、男装で家臣という事にして付き添っている。
「信頼出来るのは、才氷くらいだからね」
「だからって、毎回毎回、出掛ける度にあたしを呼ぶとか、ありえないんだけど」
そう、在政は毎回仕事や個人的な散歩に毎回あたしを誘う。
それを、毎回断れないのは、結局、在政が心配だからなんだけど。
「私は、才氷といられて嬉しいよ」
「あ、そう」
そういいながら、実は内心嬉しい。
在政は、本心を言えないあたしと違って、いつも真っ直ぐだった。


