ずっと知らなかった。

正体も知らないまま、届けられるメールでの指令によって暗殺を遂行してきた。

同業者、警察、一般人、時には現役総理大臣まで。

一体どんな『組織』なのかと、憶測を巡らせた事もある。

その自分達の雇い主…いわば『飼い主』が、嘗てあの野獣達と歌舞伎町を舞台に鎬を削り、巽と倉本2人がかりでようやく逮捕された稀代の極道、鬼首 春樹だったとは。

「ようやく仮出所にまで漕ぎ着けたぜ。長いお勤めって奴だったな」

ミニバンの後部座席にドッカと座る鬼首。

「長い事刑務所の臭ぇ飯でウンザリしていた所だ。仮出所祝いに焼肉でも食いに行こうや」

「……」

亮二達はまだ、自分達の雇い主の正体に動転している。