倉本の指示通り、巽は環の身辺警護の為に四六時中ついている。

本来は捜査一課特殊犯捜査係が身辺警護任務なのだが、今回は警護対象が環というのもあっての事だ。

「つまりボディガードですよね。カッコいい、ケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンの映画みたい」

「生憎とシークレットサービスじゃないけどな」

環の言葉に巽は笑う。

首相、大統領、皇族、王室などの要人、貴賓の人々の平素の警備、護衛及びそれを担当する政府の部署をシークレットサービスと呼ぶ。

アメリカ合衆国大統領を護衛するアメリカ合衆国シークレットサービスが特に有名。

日本ではSP(セキュリティーポリス)と呼ばれ、知られている。

逮捕術、格闘術、射撃技能(5メートル先の直径2センチの的に拳銃で10秒以内に5発以上命中させられる事)、不審者を相手より先に発見する為の目配りを怠らない強靭な体力・精神力が求められる。

また、パトカーの運転テクニック、同僚との協調性、自制心、自己管理能力、法令遵守の精神、VIPを接遇する礼儀作法、そして極限状態に陥ったならば犯人が振りかざす凶器や銃口の動線を目標に体当たりの突撃を敢行して、文字通り人間の盾となり受傷、最悪の場合は殉職する自己犠牲の精神、即ち人間性が問われる職種である。

その為、警察官の中でもとりわけ、それらの条件に該当した者のみが任命される。

巽は適任だった。

「法令遵守の精神、VIPを接遇する礼儀作法を除けば、ですけどね」

環が注釈を入れる。