警視庁内の喫煙スペース。

缶コーヒー片手に煙草をくゆらせていた倉本と巽のもとに。

「まだそんなもの吸ってるのか」

例のアメリカ人男性が歩み寄ってくる。

「世界的な禁煙ブームだっていうのに」

「お前…!」

巽が驚いた顔をした。

「クリスじゃないか!」

LAPD(ロサンゼルス市警)SWAT所属のクリスチャン・ロックフィールド。

通称クリス。

以前都内に蔓延した危険ドラッグ摘発の際に、巽達と合同捜査をしたロサンゼルスの警察官だ。

クリスの所属するSWATとは、Special Weapons And Tactics(特殊火器戦術部隊)の略称で、アメリカ合衆国の警察に設置されている特殊部隊および同種の部隊を指す。

現在、ロサンゼルス市警察のSWATは約80名体制であり、市警察の『メトロディビジョン』に所属している。

主要任務は、一般の警察官では対応しきれない凶悪犯罪(立て篭もり事件など)への対処である。

SWATは、その任務の性格上、建築物の中に突入して犯人を取り押さえるCQB(Close Quarter Battle、近接・接近戦闘)という技術が発達している。

また全米の各SWATは、デルタフォースや、Navy SEALsなどの軍の特殊部隊や、GSG-9(ドイツ連邦警察国境警備隊 第9グループ)といった他国の特殊部隊とも合同訓練を行い、技量の向上に努めている。

警察系特殊部隊としてはトップクラスの能力を有する、軍隊系特殊部隊にも引けを取らない部隊だ。