しかし。

「!!」

破壊された車の盗難防止装置のクラクションを聞きつけて、警備員達が集まってきた。

これだけ音が立体駐車場に反響すれば、当然だろう。

「マハルーチカは騒がしいのを好まれない」

そう言って、象男は踵を返す。

「何言ってやがる、見つかるとマジィから逃げるだけだろうが」

吐き捨てる松岡。

とはいえ、彼も叩けば埃の出る身。

色々詮索されるのは面白くない。

ここから逃げようとして。

「うおっ!向井 環!」

松岡は初めて、倒れている少女がアイドルの向井 環である事に気付く。

「くっそー!助けたのを恩に着せて、1発ヤルくらいできたのに!電話番号訊く暇もねぇぜ!」

悔やみつつ、松岡は引き際鮮やかにその場を去っていく。