Tokyo Dark Side

そんな案件が発生しているとは、倉本や巽でさえ知らなかった。

警視庁公安部の秘密主義も、ここまでくると大したものだ。

『マハルーチカは、かなり前から公安もマークしていますが、いまだに尻尾は摑めていない。象の仮面を被った大男なんていう目立つ格好なのにもかかわらずです』

「完全にイカレた野郎だな。只の変質者じゃないのか?」

『その可能性も捨て切れませんが、相手が宗教を名乗っている以上、公安も捜査をやめる訳にはいかない…それと』

永瀬は少々躊躇いながら切り出す。

『マハルーチカは供物として、美しい女性を標的とする…アイドルの向井 環(むかい たまき)…巽さん懇意にしてますよね?』

「……」

永瀬の言葉が何を意味するのかは、言うまでもない。

巽は呆れたように、額に手を当てた。

「またか…あの馬鹿…」

確かに巽は環と親密な関係にある。

環は過去に何度も犯罪に巻き込まれ、その度に巽が救う事で交際するようになったのだ。

しかし、こうも犯罪者に好まれるアイドルというのもどうなのか。