それで、問題のマハルーチカについてだが。

「…マハルーチカは、象面の神ガネーシャによく似た、創造と破壊の神様…この世を一旦無に返し、再生させる最高神…でもそんな神様は何処の宗教にも本当はいなくて…最近掲示板に出入りしている奴が喚き立ててるだけだって…」

「新興宗教の類か」

巽が顎に手を当てる。

「或いはセクトだな」

倉本の言うセクトとは、それぞれの宗教から派生した『分派』の事。

一様には定義できないが、近年、宗教団体による深刻な社会問題がしばしば起こった事で、ヨーロッパの各国でも同様な法整備がなされた事から、セクトには『カルト』と関連する語として、社会的に警戒を要する団体という否定的な意味も加わった。

この手の特殊組織は、警視庁公安部の捜査対象でもある。

「一応永瀬の奴にも連絡しとくか…」

巽がスマホを取り出す。