「そうか」

手にしていたショットガンを投げ捨てる倉本。

巽もまた、足を肩幅に開いて腰を落とす。

…元よりスンナリと、鬼首がこちらの指示に応じるとは思っていなかった。

断りを入れておくなら、鬼首は同行に応じたくなくて、こんな事を言っている訳ではない。

逃げも隠れもせず、警察に両手を差し出して手錠をかけられる。

鬼首は、そんな漢気に溢れた極道だと倉本達は認識している。

ヤクザとはいえ、鬼首を高く評価している。

…鬼首は、わざと従わないのだ。

こうすれば、倉本と巽に対立する大義名分が出来るから。

極道の面子にかけて、警察に従う訳にはいかない。

そういう『理由』が出来るから。

鬼首が倉本と巽に喧嘩を売る、正当な理由が必要だったのだ。