信じ難い大惨事。

倉本は辛うじて美奈を警視庁本庁舎から脱出させていた。

2人とも少なからず火傷を負っている。

「こんな事って…」

体を震わせる美奈。

東京の警察組織の象徴が、ここまでの壊滅的打撃を受けるとは。

嘗てない事態だった。

冷静な倉本でさえ、驚愕と怒りを隠し切れない。

黒煙で汚れた顔もそのままに、今尚炎上する警視庁本庁舎を見上げるしかない。

その足元、ショートブーツが。

「!」

何かを踏んだ。

足元を見た倉本が見つけたのは、煤で汚れた代紋が刻印された真鍮金メッキ製のバッジ。

正組員章のような物で、正規の組員であれば全員付けている。

そしてこの代紋は間違いなく、鬼首會のもの…!