貧乏私立探偵が、小洒落たレストランになど行ける筈もなく、2人は耕介がたまに足を運ぶというラーメン屋に入っていた。

「ここの醤油とチャーハンが絶品なんだよ」

お世辞にも綺麗とは言えないカウンター席に座る耕介。

普通の女の子がデートでラーメン屋など連れて来られたら、拗ねてしまうだろうか。

しかし雛罌粟は、耕介が貧乏な事も、女への気配りをしない事も知っている。

知った上で、彼に懐いている。

「じゃあ…醤油ラーメン…チャーハンは半分こ、しますか?…」

「おう、ついでに餃子も頼むか。食ってよく寝りゃ怪我の治りも早ぇだろ」

松岡に折られた肋骨を撫でながら耕介が言う。

今回の事件では、耕介は怪我ばかりだ。

「こりゃ巽達に依頼料弾んでもらわにゃならんな。身辺警護に捜査協力に、治療費も別途請求だな」

「探偵さん、がめつい…」

「バッカ、当然の請求だ。ここの飯代も領収書もらうぜ。警視庁宛でな」

「それは経費で落ちないと思う…」