男性を駅員に突き出し、耕介と雛罌粟は歩く。

「電車で移動なんかするから痴漢なんかに遭うんだよ、無駄にフェロモン振り撒きやがって」

ハンドポケットで文句を言う耕介。

「でも探偵さん…巽さんや倉本さんみたいにバイクや車持っていない…」

雛罌粟が反論する。

「うるせぇな、貧乏私立探偵が車持てるかよ。アッシー代わりの同居人がいたけど、今は長期出張中だしよ」

つまり移動は徒歩か公共交通機関のみ。

何とも情けない話だ。

「だからこうやっていざデートって時に、困る事になる…」

耕介の隣で、雛罌粟が微かに笑った。

「何がデートだ。2駅先で昼飯食うだけじゃねぇか」

車がない事を指摘され、不貞腐れたように耕介が言った。