「おい」

耕介に摑まれた。

「あんまり楽しそうな事やってっと、お兄さんも混ぜてもらうぞこの野郎」

額に青筋浮かべて、睨みを利かせる不良探偵。

手の主…くたびれた40代のサラリーマン男性が、脂汗を掻きながら脅えた目をする。

「次の駅で降りろ。駅員に突き出す。それとも」

男性の腕を捻り上げる耕介。

「窓開けて走行中の電車から突き出されるのとどっちがいい?」

「ひぃっ!ヤ、ヤクザの美人局だったなんて!」

「誰がヤクザだこの野郎!」

満員電車の中で、よりによって雛罌粟に手を出して耕介に捕まってしまうとは、よくよくついていないサラリーマンだ。

「探偵さん柄悪いから…ヤクザに見えても仕方ありません…」

抑揚なく言う雛罌粟。

何にせよ、痴漢ダメ、絶対。