何の前触れもなく。

雛罌粟は音もなく立ち上がった。

ゆっくりと歩き、耕介の座る椅子のそばへ。

「探偵さん…」

手を伸ばし、伸び放題になった耕介の髪に触れる。

「髪、伸びたね…」

「ん?ああ…」

いつになく艶っぽい。

そんな雛罌粟に戸惑う耕介。

彼女は椅子に座る耕介の膝に、腰を下ろす。

「…探偵さん…しよ…?」

「…止せよ」

耕介は雛罌粟を優しく、しかし両手で押し退けようとする。

「あのチンピラどもに無茶やられたんだろ?そんな体のお前を抱く気になれねぇよ…」