「仕方がないな」

松岡の責め苦を受けても決して屈しない永瀬を見て、彼の心は折れないと判断したのか。

「伊庭。この公安捜査官ごと、向井 環を刺殺しろ」

亮二が冷徹に言い放った。

「っっっ!」

永瀬が息を飲む。

打撃ならば、自身の体を緩衝材にすれば環は守れる。

しかし刃物は…刀のような長い得物では、自身の体を貫通して、環にまで届いてしまう。

どんなに覆い被さっていても、環を守る事が出来ない!

「……」

無言のまま、刀の切っ先を永瀬の背中にあてがう伊庭。

「悪いな。これも仕事なんだ」

表情を変える事なく、亮二が呟くが。