ビッ!と。

巽の口元から咥え煙草が弾き飛ばされた。

雛罌粟の鋭い右アッパーが、煙草を掠めたのだ。

「……」

流石に驚きの表情で雛罌粟を見る巽。

雛罌粟は相変わらずの無表情。

その無表情に微かな笑みを浮かべて。

「久し振りに激しいのが愉しめそうだったのに…どうしてくれるんですか?お兄さん…」

雛罌粟は妖艶に呟いた。

呟かれた巽としては面食らう。

彼はチンピラ達に襲われていた雛罌粟を助けたのだ。

その返礼が、この仕打ちではたまらない。