倉本は、刑事部長から聞かされていた我妻の娘の話を、巽にも聞かせる。

巽と倉本が検挙した、少女監禁犯。

その被害者の少女が、我妻の娘だった事。

巽達が彼女を救出するまでの間、我妻とその妻は、数年に亘って、捜査規模を縮小されてもひたすらに情報を追い求めていたのだ。

それこそ、どんな非合法な手段を使っても。

「……」

家族を奪われた我妻の気持ちを思うと、彼が形振り構わず捜査を続けていたのも理解できる。

巽だって環が何度も犯罪者の手に落ちた時は、暴走しそうになったものだ。

それを、倉本が制止してくれたお陰で今がある。

だが、我妻にはそんな相棒がいなかった。

その違いだ。

単独捜査という孤独が、我妻を人間不信に追い込んだのかもしれない。

同情すべき点はある。