「ああ、出所っていやあ」

男性が思い出したように声を上げた。

「三代目鬼首會の鬼首組長、仮出所したらしいですよ」

「鬼首か」

組織犯罪対策四課、マル暴の刑事だった我妻なら、鬼首 春樹の事は知っている。

初めて出会った頃は、まだ歌舞伎町の弱小暴力団員に過ぎなかった鬼首も、数々の抗争を経て、今では日本最大の暴力団の組長だ。

若くして成り上がったものだ。

確か巽と倉本に逮捕され、刑務所に服役していたという話だが…。

「もう出てきたのか」

とはいえ我妻にとっては他人事に等しい。

然して興味を示す事なく呟く。

「その鬼首なんですけどね、ちょいと我妻の旦那に耳寄りな情報がありまして」

男性は我妻の耳元で、ヒソヒソと囁く…。