行方不明になって数年が経過したある日、突如として娘は我妻のもとに帰ってきた。

彼女は監禁されていたのだという。

当時9歳だったあの日、男にサバイバルナイフを突きつけられ、脅され、車のトランクに押し込められて連れ去られた。

一人暮らしの男の部屋に閉じ込められ、両手足を緊縛され、声を出したり暴れたりするとスタンガンで暴行を加えられた。

『殴られているのは自分ではない』と、第三者的立場を仮想して防衛機制を働かせる解離性障害の症状が出るまでに追い詰められていた。

たまたま別件で、巽と倉本がこの男を逮捕する為に部屋に乗り込まなければ、娘は今も、部屋に監禁されたままだったかもしれない。

…我妻達のもとに帰って来ても尚、娘は心を閉ざしたままだ。

体重は極端に減り、異常なまでに肌は白く、今も監禁当時の事を思い出すのか、悪夢に苛まれているようだ。

事件は解決した?

無事に帰ってきた?

どこが無事なんだ!

娘は一生事件の事を引き摺って生きていくかもしれないんだぞ!

何も終わっていない!