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辺りを見渡すと人の姿が無かった。
ここで会っているはずなのに……。

少し辺りを散策していると――

大きな桜が目に入った。


彩り鮮やかな桜の下は、

まるで絨毯のように桜の花が辺り一面に広がっていた。


綺麗な桜を見ていると心が暖かくなった。



そんなとき、足元にふかふかとした何かがあたり見てみるとそこには、

真ん丸な真っ白な猫がいた。


私の足をすりすりしたあと、歩きだした。


その子についていくと、

私が見ていた桜の木の反対側に男性が
ベンチで寝ていた。


猫がベンチに登り、男性のお腹のあたりで座った。


居心地が良いのか、動こうとしない。


「うっ、おめぇ」



猫に乗られている男子生徒が起きた。



「ぅん、また、師匠か。
師匠は、ダイエットしろよ、おめぇよ」


「にゃ~」


「師匠、また、えずけされて、太ったろ」



そういって、猫を抱き抱え、起き上がった。

猫を膝の上に乗せた。



「師匠、俺の上に乗らないでくれよ。
重いし、色んな所歩いてきてんだから、
汚れちまうだろ」


「にゃ~」


「絶対分かってねぇだろ」



悪態をつきながらも、とても愛情をかけていることが分かる。



「あの~」


「あっ、いたのか。
全然、気がつかなかった」


「その猫は、あなたの猫ちゃんなんですか?」



彼は、猫を撫でながら、



「師匠は、学校に住みついてる。
先輩が拾ってきて、餌付けしてたら来るようになったらしい。

俺が初めてあったときも、もうすでにこんなだったし、先輩が卒業してからはなんとなく面倒見てる、餌付けしたり、体洗ってやったり、今じゃあ、学校のマスコット見たくなってる」


「そうなんですか。
師匠って名前の通り貫禄ありますね」


「師匠って呼んでるのは俺だけで、
本当は大福(ダイフク)って名前だ。

まぁ、名を体で表してて、すげぇと思って
尊敬の意味を込めて師匠って呼んでる」



大福は満足したのか、彼の膝の上から降りて、また、歩きだした。



「行っちゃいましたね」


「師匠は、気ままだから」



彼と目があい、ベンチの空いてるところを手でポンポンとした。


「ここ、座れよ」


言われた通り、隣に座った。