もし、ちゃんと祝ってあげても、その日は所詮自分が捨てられた日に変わりはない。
何が「おめでとう」だって思う。
そんな思い…させたくない。
『ありがとう…』
「だいぶ、本当の誕生日とは違うかもだけど…」
『本当の誕生日なんてどうでもいい…
今日にするから。』
「夕空…」
そしてぎゅっと強く抱きしめられる…
夕空の温もり…
夕空の啜り泣く声…
夕空の全てが愛おしくて堪らない…
『ほんと…綺麗な夕空だな』
この言葉を、夕空に口にさせたかった。
二人で夕焼け空を見て「綺麗だね」って。
『自分の名前…嫌いだったけど、ちょっと好きになれる気がする。』
「なれる…なれるよ!
アタシが何度でも名前を呼ぶからさ!」
そう力強く、夕空の胸に声をぶつけた。
何度も…何度でも、呼ぶよ?
夕空…夕空って
『ありがとな…凛時』
そう優しく耳元で呟かれて、思わず笑を零した。
アタシにできる精一杯のことができて良かった…────

