「佐野くん。」

「なんだい?」

「私、佐野くんのことが好き。一目見た時からずっと。好き。」

「ボクも紗栄子が好きだよ。」

「でも、佐野くんには死んでもらいたいって思ってる。佐野くんが死んでくれたら私は佐野くんの死を永遠に背負っていける。私の惚れたそのままの佐野くんを、私のことを好きって言ってくれたそのままの佐野くんを私の心の中だけに閉じ込めておけるもん。そして、かっこいい女になれるんだもん。」

「なんかよくわかんないけど、きっと史上最悪の束縛で、紗栄子もサイコパスだってことはわかったよ。」

「佐野くんには負けるよ。霊安室でキスしようなんて、イカレているよ。」

「芸術を追い求める者は誰もがイカレているんだよ。」

「ふふっ、バイオリニストも?」

「多分。」