F side


―― あれから2週間。

朝から7人で仕事のため、スタジオへ着くなり楽屋へ向かう。


「おはよう」


そういいながら入ると口々に 「おはよー」 と返ってくる。

いつも通りの定位置に座って隣で雑誌を読んでいる奴に話しかける。


「わた、」

「ん?太輔おはよ」

「おはよ……」

「はは、今日も進展なし?」

「…あれ、夢だったかなあ…」


項垂れる俺の隣で、 「そんなことないでしょ」 って笑う。

あれ、というのは。
俺と北山が一つ屋根の下で両想いになったハナシ。
その日は抱きしめあってそのまま寝ちゃって、朝起きたら北山は仕事でいなかった。

それから2週間、話すことは増えたけど、キスやそれ以上はおろか抱き合う、手を繋ぐもなし。

そして1番気になってるのが、北山から好きって言われてないこと。

「おれも」

両想いになれた日、俺はこの3文字で満たされた。…あの時は。

はぁ、と溜め息をつきながら北山の方へ目をやると。


「っ、」


ぱちりと目が合う。


「…!」


まさか、こっちを見てるなんて思いもしなかったから。


「わ、わた!」

「どうしたの」


俺の慌てぶりにクスクスと笑うわた。


「き、北山がこっち見てた!」

「へえ、よかったじゃん」

「どうしよう、隣行きたい…」

「行けば?」

「だって、メンバーにバレちゃう…」

「もうバレてもいいじゃん?」

「え、?」

「メンバー公認カップル。なりたくない?」

「っ!なりたい!!!」

「でしょ?ほら、行ってきな」


わたの言葉でフラフラと北山の元へ。


「え、藤ヶ谷!?」

「きちゃった…」

「ちょ、ここ楽屋!」

「わたが、メンバー公認カップルって…」

「は?意味わかんない、っ…ちょっと!」


2週間我慢したぶん、今イチャついてやる。

メンバーの目なんてきにしなくなった俺は北山の首に腕を回して顔を埋める。

と。



「あー!!!藤北が!!!」


案の定、俺達に反応して叫んだのはニカ。


「え!!!」


それに加えて健永。


「待って、ナニゴト!?」

「ガヤさんキャラ崩壊!?」

「あぁぁあ!萌ですなあ!!」


思った以上に食いつくなぁ。

なんて呑気に思ってたら。


「っ!」


ぐい、と肩を押し返されたかと思うと、逆に俺の胸に顔を埋める北山。

そして、いきなり…というか初めての北山からのスキンシップ(?)に動揺してる俺にひとこと。


「っ、はずかし…」


ナニコレ…可愛い。

北山の可愛さとメンバーからの歓声(?)とで頭の中がぐちゃぐちゃになった俺は思わずわたに助けを求める。


「はーい、落ち着いて」


にっこりと微笑んだわたはメンバーを黙らせる。


「ほら、太輔。みんなに言うことは?」

「…北山と、つき合って、マス…」


シーンとした楽屋に俺の爆弾発言。

口を開けたメンバーは一瞬固まったあと、


「えーーーーーーーーーー!?」


絶叫。

その声に驚いてピクリと動く北山と、 「うるさい!」 と叱るわた。

そんなこんなで俺らはメンバー公認カップルとなりました。