振り袖姿の女たちが笑う。
賑やかで、きらびやかな雰囲気をまとい
パタパタと式場へ向かう。
その姿に唇を噛みながらにらみつける女。
まだ芽を出さない銀杏並木道のベンチに
座りココアを片手に暖をとる。
未成年の清水たか子。
大人になれない苛立ちをぶつける場所なんてなく、求人雑誌に丸をつけるだけが、せめてもの反抗だった。
たか子は、母子家庭に育ち、義理の父親が突然できたことに、居場所がないと感じ、家を出た。
ベンチと言う居場所を無惨にも雪がふり、居心地悪くする。
『はぁ、、どうするかなぁ。』
たか子は、わずかなお金を確認して立ち上がる。
『お嬢ちゃんいくつ?』
50代だろうか。いかにも、悪そうなうな男が声をかけた。周りの誰もが助けようかと、そわそわしている。
『19です、、。』
たか子は、男の顔を見た。
『こっわ!』
と叫びたい気持ちを抑えて、ニコッとしてみた。
『行くとこあるのか?』
そう聞かれ、黙るたか子。
『じゃあ、拾うか』
まるで野良を扱うかのように、たか子を連れて歩き出した。
すると、男の顔と対比するほどの、優しい色合いのレンガの家の前に立ち止まり、言った。
『ここ俺の家だが空き家だ。お前好きに使え』
たか子は、小さい頃、人形遊びが好きで、あれもこれも親にねだっていたが、一番欲しかったのは、人形サイズのオモチャの家。可愛らしいレンガで電気までつく優れものだ。結局、買っては貰えなかったが、今まさしく、それに似た家が、自分サイズとして、目の前にある。
『昔の嫁の趣味だ』
と男は言った。それ以上語ることはなかったが、以前結婚していた人だということは世間知らずたか子でも理解できた。
そして、、、身を潜めるように、その家に住むことにした。
男は、身分を明かさず、話を進めた。
家賃は、人生で払うこと。そう契りを交わした。
たか子は、人妻になった。