「おい、いつまで寝ているんだ」 「……ん、おはようでぃら」 「おはよう、ほら、顔を洗ってこい」 「はぁい」 ぼんやりとした時に聞くディラの声は幾分か優しく聞こえた気がする。 凛としていて、覇気のあるそれは。 柔らかくも芯のあるそれは。 時々花の香りにも似た甘さの声に変容した。 『顔を洗う時には、水面に映る自分の姿をよく見ておけ』 これはディラの教えの一環である。 小さい頃の私には理解出来なかったこと、今では少し解る気がする。