私、先生と付き合ってます。

私は教室に戻った。三時間目、四時間目を普通に受けて…迎える昼休みー

相田主将は日課のように私の元を訪れる。

二人でランチしながら剣道の話で盛り上がっている。

何とか、五、六時間目も終えて、道場に向かう私。

二週間は止められてて、部活を見学している。

それでも私に出来ることは…と思い、動き回っている。

「三咲ちゃん~」とマネージャーに声をかけられた。

マネージャーと談笑している私。

けど…皆の練習を見てると涙が溢れてきた。

泣きたくないのに…涙は止まらず溢れてくる。

悔しくて…苦しくて…辛くて…。

私は唇を強く噛みグッと涙をこらえる。それでも溢れてくる涙…。

耐えられなくなった私は道場を抜け出した。

特にあてもなく…保健室に行こうか、悩んでいたとき後ろからいきなり抱き締められた。

背中から伝わる体温…。すぐに先生だってわかった。

体が熱くなる…。「…先生?」と私が言うと、「ムリしなくていい。おもいきり泣けばいい。けど、泣くのは俺の胸だけにしてくれ」甘く低音で、囁かれた言葉に体の熱がさらに上がった気がした。

先生は離れると、今度は正面から抱き締めた。

「辛いのも苦しいのも、悔しいのもわかる。けど、早く良くなることを一番に考えて。皆、キミのこと待ってるんだから…」と先生は優しく言うと、私の頭を撫でてくれた。

溢れる涙は…止まった。

…好き…

小さな声で呟いてみた。

「俺は大好きだよ!」と優しい言葉が降ってきた。

しばらくして、私も落ち着いて道場に戻った。

そしたら…心配そうに見つめるマネージャー。

「三咲ちゃん~」と相田主将は私のところに来るや否、おもいきり抱きついてきた。

「早く良くなって、俺の相手してね~」って。

「主将ばっかズルいっす!!俺らも相手してほしいのに…」と部員たちの声かけに私ははーいと返事した。

その日、皆が帰った後、掃除しながら思った。

私って幸せ者だなって。

大会間近で、皆気が張ってる…それでも私のために、励まそうと笑顔で声をかけてくれる。

嬉しくてならなかった。

そして思った。主将のためだけじゃなく、皆のためにも全力で応援しようって…。

「やっと、吹っ切れたか!?顔つき変わったな。俺はそんなお前も大好きだぞ!!優しくて、頼れる…」と先生は言った。

ありがとうございます!!と私は笑った。

それから大会までは私は皆のために必死に様々な努力を続けた。

出来る限りのことをした。皆の調子は格段に上がっている。

スピードもあがり、積極的な攻め方…美しいホーム…そんな皆を見つめながらただ思う…。羨ましいって。

また涙が出そうになった。けど、今回は笑顔でいれた。

先生の言葉と皆の笑顔があったから。

ー大会当日ー

いよいよこの日を迎えてしまった。

皆の緊張が伝わってくるー

私はマスターにお願いしていたハーブティーの水筒を出した。

実はムリ言って一人分ではなく、皆の分を用意してもらっていた。

周りは最後のあがきと言わんばかりの練習をしている。

けど…私達は、それを一切せずにマネージャーと先生、私を含め、皆でハイビスカスとローズヒップのスペシャルブレンドを飲んでいた。

『アイツら、何やってんだ?』という目で見られてるのは気づいてた。

けど…私達は決めていた。最後のあがきはせずに、ハーブティー飲みながら、集中力を高めようと。

思い思いに集中力を高めていく。

即効を発揮したのは、一週間みっちり色んなハーブで調子を調えてきた相田主将だった。

けど…皆も、いいルーティーンにはなったようで…安定した集中力を保ててるようだった。

いよいよ試合は始まった。

私は息することを忘れそうなほど見いった。

皆安定した集中力で戦っている。

うん!行けそうだ!私は皆を信じ祈った。

その横で興奮気味に応援しているマネージャー。

少し離れたところで先生は見守っている。

一勝するたび、小さくガッツポーズしている先生を私は見逃さない。

一段落ついて、皆が戻ってきた。残すは決勝のみで、ウチのメンバーは主将だけ…。

けど、皆よく頑張ってた。落ち込んでる人もいたけど…。

「お疲れ様でした~」と私は明るく言って、皆にタオルと水を渡した。

「三咲ちゃん!俺、初めて決勝行ける!!」と興奮した相田主将は抱きついてきた。

もぅ、この人、すぐ抱きつくんだから!!

「おめでとうございます!!良かったですね!メンタルケア成功」と私は言って、されるがまま抱きつかれていた。

そこに先生が咳払いをひとつして近づいてきた。

「おめでとう。けど…まだ終わったわけじゃないから気を抜くなよ!」と先生は言った。

そしたら、相田主将、私から離れていきなり先生に抱きついた。

「司ちゃーんありがとう!俺、三咲ちゃんのおかげでここまで頑張れたよ!」って。

「暑苦しいなぁ~」と言いながらもどこか嬉しそうな先生。

「俺、もう少し気張るから皆見守っててね!」と相田主将は言った。

相変わらず場違いな空気を醸し出す相田主将だけど…相田主将のおかげで、私達の周りだけは和やかなムードだった。

「…主将らしいでしょ?」とマネージャーは言った。

私は大きく頷いた。

和やかなムードに皆の笑顔と笑い声…。

周りはピリピリした空気感…それでもここだけは違う。

ふと思う。そっか、こーゆう人が主将だからこそ…皆こうして笑ってられるんだね。

こんなピリピリと張りつめた空気感の中で普通は笑えない…。

私もそうだった。けど、今は皆と笑えてる。これは多分、相田主将がこんな性格だからだよね!

私も見慣はないと!

「俺のこと見つめてどーしたの?三咲ちゃん?」といきなり相田主将に顔を覗き込まれて…一瞬ドキッとした。

赤くなる顔を隠すように、「カッコイくて見惚れてましたー」と言うと、可愛いと頭を撫でてくれた。

大きな手が優しく私の頭を撫でた。

照れ隠しで、私は少しうつむきながら、「頑張ってね!」と呟いた。

先生の顔を見る余裕なんて無いけど…オーラで、怒ってるのはわかる。

けど、私は気づかないふりをした。

「そろそろか?水でも飲んでいけ…」と先生は言って、相田主将に水を渡した。

水を飲んで、行ってくると皆に手を降って去っていった。

皆は相田主将を見守った。

息を飲む大迫力の試合…

結果は残念ながら敗れたーけど、相田主将出しきったといわんばかりの満足そうな顔している。

私はホッとした。

「あ~ぁ、負けちゃったよ~」と明るく言いながら皆の元に戻ってきた相田主将。

私は思わず口に出してしまった。

「けど、めっちゃカッコ良かったですよ!」って。

皆はうんうんと頷いてくれる。

あっ、私、またやってしまった…。先生いるのに…

恥ずかしくて先生の顔見れない…。

けど、先生は今度は怒っていない!?

「めっちゃカッコ良かった。同性だけど、惚れそうになった」と先生は言って、相田主将の頭に手をのせた。

そして優しく、「おつかれさん」と言った。

相田主将は照れながら嬉しそうに笑っていた。

しばらくして、「そろそろ表彰式やね!」と先生は言った。

相田主将は初表彰式を楽しみにしていた。

緊張で顔を強ばらせながら、表彰式に向かっていった。

表彰式ー

準優勝だった相田主将は堂々としていた。

無事表彰式を終えた相田主将と私達は、学校に戻った。